PPP/PFIの源流(1)

序章: 背景と目的

1999年に施行された「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(以下、PFI法)は、公共サービスの質の向上と効率化を目指し、日本における新たな公共事業モデルとして導入されました。この法案が策定された背景には、バブル崩壊後の財政危機や、老朽化した公共インフラの維持管理コストの増大という課題がありました。従来の税収に頼った公共投資では対応しきれない中、PFIは民間の資金やノウハウを活用することで、効率的かつ持続可能なサービス提供を実現する方法として期待されました。それから25年が経過した今、PFIは国内外で幅広く活用され、日本の社会インフラ整備や公共サービス提供の分野において重要な役割を果たしてきました。

PFI法の施行当初、日本ではバブル経済崩壊後の厳しい財政状況が続いており、公共インフラの整備・維持において従来の税金依存型のアプローチには限界が見え始めていました。そのような背景の中で、PFIは、民間の資金やノウハウを活用することで、効率的かつ高品質な公共サービスの提供を可能にするものとして大きな期待を集めました。

25年間の歩みを振り返ると、PFIは全国各地でさまざまな成果を上げてきました。空港運営の民営化、病院の建設・運営、学校施設の整備、道路や上下水道など、多岐にわたるプロジェクトが実現し、それぞれが地域社会に貢献しています。特に、空港コンセッション事業や上下水道事業では、地域経済の活性化やサービスの向上という形で、PFIの効果を実感する声も少なくありません。一方で、課題も浮き彫りになっています。透明性の欠如、不適切なリスク分担、入札競争の不足、地方自治体の能力不足などが挙げられます。これらの課題が解決されない限り、PFIの持続可能な発展には限界が生じる可能性があります。

また、国際的な視点から見ると、英国や豪州をはじめとする先進的なPFI事例との比較も、課題を理解する上で重要です。英国では、1990年代から導入されたPFIが公共サービスの向上に寄与しつつも、長期的なコスト負担や透明性の問題が批判を浴びました。一方で、豪州では、より柔軟で透明性の高いアプローチが取られており、日本にとって学ぶべき教訓が多いといえます。

本書では、こうした25年間の成果と課題を振り返り、具体的な事例を通じてPFIの本質を解き明かします。そして、これからの日本におけるPFIの可能性を探り、新しい時代に求められる公共サービスの在り方について提言を行います。

今後、人口減少や高齢化が進む中で、地域社会が抱える課題はますます多様化し、複雑化していきます。そのような環境下で、PPP/PFIはどのような役割を果たすべきか。本書を通じて、読者がPPP/PFIの全体像を俯瞰し、その可能性と限界を本質的に理解する一助となれば幸いです。